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zoom RSS 新☆LME学園  番外編 03

<<   作成日時 : 2014/06/25 18:15   >>

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  『涙の理由』



 お屋敷のエントランスに置かれたソファーでセバスチャンさんを待っていると、敦賀さんが階段を下りてきた。

 私が学園の寮を出てお屋敷へ来た翌日に敦賀さんもお屋敷へ戻ってきたのだ。

 それからというもの、学園へは二人で行き、帰りも二人で帰ってくるようになった。

 あの森での告白以来、私は敦賀さんの姿を見る度に心臓が速度を増すのを感じる。どんな顔をしたらいいのか困るけれど、敦賀さんはごく自然な態度で接してくれるから、私もそれに合わせる努力をする。

「今朝のスープは最上さんが作ったものだって、さっきメイドに聞いたけど」

「はい。奥様にも食べていただけるかと思いまして」

 野菜をよく煮込み、胃腸に優しい味付けにした。

「すごく美味しかったよ。ありがとう」

 奥様のために考えたメニューだったけれど、こう言われると、自分が敦賀さんのために料理をしたような錯覚に襲われ、気恥ずかしくなる。

 あの告白以来、敦賀さんは度々、とても優しい眼差しで私を見つめる。

「蓮様、キョーコ様、お車の準備ができました」

「はい! セバスチャンさん!」

 おそらく、耳まで真っ赤になっていただろう私は、セバスチャンさんの声に過剰に反応して、兵隊のようにピシーッと背筋を正した。

「キョーコ様、お顔が赤いですね」

 そう言うと、セバスチャンさんは私が小さい頃のようにその額を私の額へとあてる。

「お熱はないようですが、具合は悪くないですか?」

「大丈夫です」と答えようとしたその時、私はぐいっと後ろ側に引っ張られた。

「彼女は子供じゃないんだから、そんな熱の測り方する必要ないだろう?」

 苛立っている敦賀さんの声に私は緊張する。

「蓮様がいらっしゃるのを失念しておりました。すみません」

 そう答えたセバスチャンさんの声も笑顔も、言葉とは合わないものだった。

 後部座席に私を誘導して、セバスチャンさんが扉を閉めてくれる。

 エンジンをかけて車が動き出した時、「あのさ」と、私の隣に座っていた敦賀さんが運転席のセバスチャンさんに声をかけた。

「俺、君の正式な名前をまだ知らないんだけど」

「名前など呼ばなくてもテキトーに呼んでくだされば結構です」

「じゃ、俺もセバスチャンって」

「それはご遠慮ください」

「どうして?」

「キョーコ様と子供たちとの大切な思い出の名前ですから」

「そこに俺が加わったところで問題ないと思うんだけど?」

「問題はございませんが、支障がございます」

 ミラーに映るセバスチャンさんの表情はまったく変わらない。

 しばしの沈黙の後、敦賀さんは「じゃぁ、」と言葉を続けた。

「“黒執事”とでも呼べばいいのかな?」

 その言葉に私は、パソコン部の後輩が時々部室に持ち込んでいるマンガ本を思い出す。

 セバスチャンさんの表情がすこしだけ動き、両端の口角が綺麗に持ちあがる。

「それで、結構でございます。あくまで、執事ですから」



 校門の前で車から降り、私は敦賀さんに言った。

「セバスチャンさんと敦賀さんって仲がいいですよね」

 私の言葉に、敦賀さんはあからさまに嫌そうな表情を見せた。

「どの辺が?」

「いつも楽しそうに言い合ってるじゃないですか?」

 素直な表情を見せる敦賀さんに私は笑う。

「楽しくはないよ」

 そう肩をすくめてから、「俺が楽しいのは……」と、敦賀さんは私の髪に触れた。

 私は緊張から笑いを引っ込め、頬が熱くなるのを止められないまま敦賀さんの瞳に吸い込まれるように、視線をそらせなくなる。

 そこに、二人以外の声が割って入り、私は慌てて敦賀さんから離れた。

「キョーコちゃん、おはよ」

 その姿に驚きながらも、私は挨拶を返す。

「貴島さん、おはようございます」

「ずいぶん、早いね……」と、敦賀さんは作り笑いを貴島さんに向ける。

「君たちはいつもね」

 貴島さんのその言葉に私は驚く。私と敦賀さんは誰にも悟られないようにセバスチャンさんに送ってもらっているつもりでいたからだ。

「今日はキョーコちゃんにお願いがあって早めに来たんだよ」

 貴島さんは私に視線を向けると、すこし身をかがめて私の瞳を覗き込むようにして微笑んだ。

「次の演劇部の公演に出てほしいんだ」

「……私がですか?」

 演劇部の公演に?

「そう。キョーコちゃんが」

 笑みを深める貴島さんに私は困ってしまう。

「私には荷が重いです」

 この学園の演劇部と言えば、プロの劇団からも声がかかる実力者ぞろいだ。

「全然、大丈夫」

「でも……」

「とにかく、ちょっと考えてみてよ。もちろん、前向きに」

 そう言って、貴島さんは器用にウィンクした。


 朝は、敦賀さんと別れた後、私は授業が始まるまで高等部の生徒会室にいることが多い。

 そこに私以外の誰かが来ることは珍しかったけれど、特にモー子さんがその時間に来ることなど皆無だったから、開いた扉からモー子さんの姿が見えた瞬間、私は嬉しさから抱きつこうとした。

 そんな私をモー子さんは軽い身のこなしでかわす。

「あんた、貴島さんに演劇部に誘われたんだって?」

「演劇部にっていうか……次の公演に出てほしいって……」

「そう……あの男、本気だったのね」とモー子さんは眉間に皺を寄せる。

「興味があるならやればいいと思うけど、断るなら早めに断ったほうがいいわよ」

「うん。そうだよね。配役とかの関係もあるだろうし、皆さんに迷惑が……」

「そうじゃなくて。あんまり噂が広がる前にってこと」

「噂?」と、私は小首を傾げたけれど、その言葉の意味はすぐにわかった。

 教室に行くと、すぐに数名のクラスメイトが声をかけてきた。

「最上さん。次の演劇部の公演に出演するんだって? 楽しみにしてるね」

 何度かかけられた同じような言葉に戸惑っていると、お昼休みにはすこし違う言葉になっていた。

「パソコン部から演劇部に移るって聞いたけど?」

 そして、放課後に部室へ行くと、後輩の男の子たちに泣きつかれた。

「先輩、行かないでください!」

「なんで演劇部になんて行っちゃうんですか!!?」

 そんな状況に私が戸惑っていると、いつの間にか隣に立っていた社先輩が苦々しく言った。

「完全に貴島くんにやられたな……」

「どうしましょう!? 社先輩!!」

「キョーコちゃんが出たくないなら、断ったらいいよ。噂も、いまのうちなら誤解が広まっただけのもので済むだろうし」

 優しく微笑む社先輩に私は深く頷く。

「私、断って来ます!」

「俺も貴島くんに用事があるから一緒に行くよ」

 私に向けていた優しい笑顔とは違い、眼鏡の奥がすこしチカリと光る。

 そんな社先輩と演劇部の部室へ行くと、すでに先客がいた。

「つ……会長、どうしてここに?」

 私は敦賀さんという呼び名を呑み込んで言いなおす。

「学園の風紀を乱さないようにちょっと注意をね」

「違うだろう? 正直に言いなよ。キョーコちゃんが公演に出るのを邪魔しに来たって」

「別に、俺は彼女が公演に出るのを邪魔しに来たわけじゃない」

「でも、キョーコちゃんの綺麗な姿が全生徒に知られるのは邪魔したいだろう?」

「それは、当然のことだろう?」

「っ!!? 会長!!?」

「好きな子の魅力的な姿なんて、他の男に見せたいわけがないんだから」

 私の頬が熱くなるのを誰も止めることはできない。

「もう、どうして……」

 思いがけず、目がしらが熱くなる。

「どうして、こんなところでそんなこと言うんですか!?」



 私は涙が落ちる前に慌てて部室から出て、走りだした。

「最上さん!」

 敦賀さんの声が私の背中を追い、足音が続いてくる。

「来ないでください!」

 どうして、こういう時、人は上へと逃げてしまうのだろう? 逃げ道が確実に失われてしまうのに?

 そんなことをどこかで思いながらも、階段を駈け上がるのを止められない。

 屋上へ続く扉に辿り着くすこし前、私の腕は大きな手に捕まって、引き寄せられた。

「最上さん、待って!」

「もう……見られたくないのに」

 私は顔を覆って、その場に座りこんでしまう。

「なんで、泣いて……」

「わかりません!……わからないけど、涙が勝手に出るんです」

「……それは、」と、敦賀さんが慎重に言葉を発する。

「俺の言葉……気持ちが迷惑で?」

「……そんなわけないじゃないですか」

「……」

「……たぶん、逆です」

 敦賀さんはゆっくりと私の隣に腰を下ろした。

「嬉しくて」

 素直な気持ちをそう口にした瞬間、私の体は強い力に引かれて、ぎゅうっと抱きしめられた。

「最上さん、好きだよ」

 その言葉が罠であることは知っている。

 私の気持ちを引きだすための誘導だ。

 そうと知りながら、その罠から逃れることなどできずに、私は罠にはまる。

「私も……好きです」



画像

イラスト: 桃色無印  きゅ。様



********


やっと、やっと……きゅ。様のイラストを使う場面が書けたーーー!!!
ずーっと前に、きゅ。様にイラストの使用許可をいただいていたのに、なかなかここまで書くことができず、内心、焦っていたのですが……よかった(><)!!
本当によかった(><)!
皆さま、きゅ。様の素敵なイラストをご堪能ください☆


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