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zoom RSS 新☆LME学園 074

<<   作成日時 : 2014/01/19 12:21   >>

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 最上さんの謝罪の言葉に俺は少なからずショックを受ける。

「それは難しいんです」と最上さんは言葉を続けたが、俺は深く考えることもせずに「どうして?」と反射的に聞き返していた。

「子供たちと約束したんです。夏休みの残りはずっと一緒にいるって」

 最上さんを守るために俺と貴島くんに厳しい眼差しを向けていた子供たちを思い出す。

「……夏休みの残り半分を園で過ごして、半分を俺の家で過ごすというのはどうかな?」

 諦めきれない俺は妥協策を提案する。しかし、最上さんからは「それも無理です」と断られる。

「私が帰ってきたらやりたいことを前もって考えていたみたいで、毎日予定が入っているんです」

「ごめんなさい」と、最上さんはもう一度、謝罪の言葉を口にした。

「いや、君が謝ることはないよ。君を束縛していたのはこちらの勝手だし、それなのにさらに束縛しようというのは、虫が良すぎるよね……」

 虫が良すぎるのは百も承知だったが、彼女を家につれて帰るのがこんなにも難しいことだとは思ってもいなかった。

 なにか策はないかと考えていると、最上さんが控えめな声を出した。

「……あの、それじゃ、私はこれで失礼します」

「え? どこに行くの?」

「えっと……」と、目をふよふよと泳がせてから、最上さんはちらりと俺の顔を伺った。

「笑いませんか?」

「もちろん、笑ったりしないよ」

「実は、いまからこの森で妖精の世界への扉が開く……かもしれないんです」

 俺は自分の耳を疑った。

「……え?」

「ですから、この森で妖精の世界への扉が開くんです。私はその瞬間を待っているんです」

 最上さんの表情はどう見ても真剣だ。俺は何も言えずに、ただ唇を引き結んだ。

「……笑いましたね?」

 唇を引き結んだが、自分の意志に逆らって、唇はふよふよと形を崩して笑みの形をつくっていたらしい。

「いや、笑ってないよ」

 気付かずに緩んでいたらしい口元をさらにきつく引き結んだが、遅かったようだ。最上さんの目がつり上がり、俺を睨む。

「笑わないって言ったのに! 敦賀さんのうそつき!!」

 頬を膨らませて怒る最上さんの姿が可愛くて、俺の眉尻は下がる。

「ごめん。妖精の世界への扉が開くなんて言われて『はい、そうですか』なんて素直に頷く人間がいるとは思わなくて……」

「なんでですか? 妖精に会えるんですよ?」

 妖精に会えるんですよ? などと言われても……まず、それを素直に信じていることがやはり信じられない。

「なるほど」と俺は頷く。

「マリアちゃんの言っていた意味がわかった」

 俺の小声に最上さんは「え?」と聞き返す。

 俺は十数分前のマリアちゃんとのやりとりを思い出す。

『わかったわ!』

 そう答えたマリアちゃんに俺は『ありがとう。マリアちゃん』と微笑んだ。しかし、マリアちゃんはそんな俺に神妙な顔つきで『でも』と言葉を続けた。

『ひとつ、条件があるの』

『……なに?』

『お姉さまに蓮さまが妖精だって信じさせて』

 俺はマリアちゃんの提案に驚いた。

『それは無理だと思うけど……』

『んーん! 絶対に大丈夫よ!!』

 自信たっぷりなマリアちゃんの様子に俺は首を傾げる。

 その時はなにが大丈夫なのかさっぱりわからなかったけれど、どうやら本当に“大丈夫”らしい。

 最上さんは妖精がいると本気で信じているようだし、俺が自分を妖精だと思っているおかしな人間だと思われる可能性も低いだろう。

俺はマリアちゃんとの約束を守るべく、彼女に魔法をかける。普通だったら、絶対にかからないような下手な魔法を。

「あのね。それじゃ、そんな純真な最上さんに俺からも秘密の話を教えてあげる」



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