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zoom RSS 新☆LME学園 069

<<   作成日時 : 2013/11/10 21:09   >>

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 俺がキョーコと会ったのは、二年前の今ごろだった。

 物心がついたころには母親はいなかった。死んだのか、生きているのかさえ知らないが、母親のことを聞くと親父は決まって不機嫌になった。そして、そんな親父は俺が五歳の冬に蒸発した。借金取りから逃げて。

 養護施設に預けられた俺は、大人が信じられなかった。優しく手を伸ばしてくる大人もいたし、思うようにならない俺を殴る大人もいた。どんな大人に対しても無表情で何の反応もしなかった俺に手を焼いて、大人たちは俺を他の施設へと移した。そんなことが何度か繰り返されて、一年後、キョーコのいるこの施設へと移された。

 最初は、ここの大人も他の施設と同じだと思った。園長が相当な変人だという点以外は。だけど、ここにはキョーコがいた。キョーコは、利己的で打算的な大人と違って、いつだって子供の味方だった。

 キョーコは、はじめて俺のことを抱きしめてくれた人間だった。額に祝福のキスをしてくれた人間だった。
 
 はじめて、無条件に、俺に「大好き」だと笑ってくれた人間だった。

 俺はキョーコの前で、はじめて泣くことができた。はじめて、俺を置いていった親父と見知らぬ母親に「大っ嫌いだ!」って甘えたことを言うことができたんだ。

 中庭に出て、キョーコのもとへと戻ると、キョーコはすぐに俺に気がついて、「ショーちゃん、ありがとう」って微笑んだ。

 俺は照れ隠しで大袈裟に眉を潜めて見せる。

「だから、言っただろ? マリアのことは心配することないって? ピンピンしてんじゃん」

「でも、心配だったから」

 キョーコにべったりくっついているマリアは不思議そうにキョーコを見る。

「お姉さま?」

 マリアに優しく微笑むキョーコこそが、俺には“マリアさま”に見える。

「ショーちゃんにね、マリアちゃんを探してきてくれるように頼んだの。マリアちゃんのことが心配だったから」

 感動したようにマリアはその瞳をキラキラと輝かせて、キョーコに抱きついた。

「お姉さま、大好き!」

「私も大好きよ」と、キョーコはマリアを抱きしめる。

「私も!」「僕も!」と他の子供たちもキョーコに抱きつく。

 俺も抱きつきたいのに、素直になれない俺の悪い癖が、俺の邪魔をする。

「……くっそ!」

 密かに舌打ちすると、キョーコが「ショーちゃん」と俺を呼んだ。

 キョーコに視線を向けると、キョーコは天使みたいに笑う。

「ショーちゃんのことも大好きよ」

 俺の顔は一気に熱くなる。

「俺も好きだ」って言えればいいんだけど、俺にできたのは視線を逸らし、「当たり前だろ!」と強がることだけだった。

「尚は素直じゃないわね」

 マリアがキョーコに抱きついたまま言う。

「そんなことだと、お姉さまのこと、誰かに取られちゃうわよ? この前だって、きじ」

 そこまで言ったマリアの口を俺は慌てて塞ぎ、マリアに注意した。

「お前、バカっ! 貴島って男がここに来たことはキョーコには秘密にするって皆で決めただろ!!」

 俺の注意に、マリアはなぜか眉間に深い皺を寄せて、バカにするような目で俺を見た。

「なんだよ? その目……」

 マリアに苛立った俺だったけれど、キョーコを囲む子供たちが全員俺にそんな目を向けている。

 そして、キョーコが堪え切れなくなったように声をもらして笑いだした。

「え? なんだよ?」

 笑いながら、キョーコは「それで? 貴島さんはなにしに来たの?」と俺に聞いた。

「あ……俺……」

 焦る俺に、「ばーか!」とマリアは頬を膨らませた。


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