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zoom RSS 新☆LME学園 067

<<   作成日時 : 2013/10/06 19:59   >>

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 母さんが眠りについたのを確認した俺は、俺と母さんに気を遣って部屋を後にした最上さんを探しにキッチンへと向かった。

 最上さんと別れてからほんの2時間ほどしか経ってはいなかったけれど、俺は乾いた喉をうるおす水を求めるように彼女の存在を求めていた。

 俺のことを探していたと言った母さんの眼差しと、幼い頃に鬼ごっこをしたクオンの眼差しが重なる。クオンも心配していると母さんは言った。優しいクオンならば、もしかすると本当に、天にあるという国で俺のことを心配しているかもしれない……。

 この十年間、俺は罪の償いをしてきたつもりでいたけれど、そうではなかったのかもしれない。ただ、自分の罪から、罪の先に続く自分の人生から、目をそらし続けていただけなのかもしれない。

 俺はこの先にのびる、自分の未来に思いをはせる。クオンがもう2度と戻っては来れないように、俺の罪が消えることはない。

 そして、俺の未来が都合よく、断ち切れてしまうこともない。そうなってくれたならどんなにいいか、これまでどんなに願ってきたか……けれど、俺は未来から逃げないことに決めた。

 クオンの分まで、生きる……できれば、そんな俺の隣には、最上さんにいてほしい。

 しかし、キッチンにも、菜園にも最上さんの姿はなかった。いつもなら、野菜やハーブの収穫を手伝っている時間なのに。

 仕方なく、いつも不機嫌なシェフに声をかける。

「あの、最上さんは?」

「あいつなら、自分の家に戻ったよ」

 いつも以上に不機嫌なシェフからの返答を聞き、俺は急いで自分の部屋へと戻った。テーブルの上に置いておいた携帯電話を手にし、ある場所へと電話する。

『お前から電話してくるなんて、珍しいな』と、宝田園長はからかうような声で言った。

「最上さん、戻ってますか?」

『お前が他人のことを気にかけるなんて、ますます珍しいな』

 笑う園長に、俺は強い口調になってしまう。

「彼女はそこにいるんですか!?」

『最上君の仕事は終わったんだろう?』

「いるんですね!?」

『いま、セバスチャンに送られて帰ってきたところだ。随分と疲れているみたいだからな、迎えになんか来るなよ』

「疲れて……」

 それは紛れもなく俺のせいだ。

「迎えに行きます」

『だから、来るなって』

「会いたいんです」

『だからだよ』

「え?」

『最上くんがそう思えるまで、待て』

 最上さんがそう思えるまで……?

「俺に会いたいと思うまでですか?」

『ああ』

「……待てません」

 彼女が、自分から俺に会いたいと思う日なんて、来るんだろうか?

『随分、余裕がないんだな』

「余裕なんて持てるわけないでしょう?」

 最上さんは、俺のことを特別に思っているわけじゃない。ただ、底抜けの優しさで俺の過去を受け止めてくれただけ。

『お前な……もうちょっと自信持てよ』

 自信なんて、どこで持てばいいんだ? 俺には彼女が必要で、でも彼女は俺なんていなくても強く生きていける。

「やっぱり、迎えに行きます」

『……わかったよ』

 園長はため息を落とし、『しかし、』と言葉を続けた。

『最上くんに会うのに、協力はせんからな』

「協力? 彼女は部屋にでも閉じこもっているんですか?」

『いや、問題は最上くんじゃない』

「どういう意味ですか?」

『まぁ、来てみればわかるよ』

 電話越しに笑う園長の言葉の意味はわからないまま俺は電話を切り、車のキーを掴んだ。


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