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zoom RSS 新☆LME学園 061

<<   作成日時 : 2013/03/27 20:44   >>

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 いくつもの廊下を駈け、いくつもの廊下の角を曲がり、敦賀さんの部屋の前まで来た私は繊細な装飾の施された木の扉を強めに叩いた。

「敦賀さん! いらっしゃいますか!?」

 その扉はすぐに開かれ、中から出てきた敦賀さんは驚いたように私を見つめる。

「最上さん、どうしたの? そんなに慌てて……」

「すぐに来てください!」

私は敦賀さんの腕を引っ張り、奥様の部屋へと連れて行こうとした。

「え?」

「奥様が敦賀さんを呼んでいるんです!」

「っ……」

 私の言葉に敦賀さんは息を呑み、歩きかけていた足を止めた。そして、敦賀さんの腕に触れていた私の手に自分の手を重ね、「……行けない」という一言を零した。

 私は敦賀さんの言葉が理解できなくて、「……え?」と聞き返した。

「俺は、行かないよ……母さんには会わない」

 敦賀さんは、一体なにを言っているんだろう? 私は困惑する。

「奥様が呼んでるんです!」

 私は悲鳴を上げるみたいに叫んでしまった。

 それでも、敦賀さんの意志は変わらない。

「……だから、会わない」

 そう言う敦賀さんの瞳に光はなく、その目はまるで、どこかに心を置いてきてしまった奥様のもののようだった。

「……………」

 なにも言えずに言葉を失くした私に、敦賀さんは涙を流すように言葉を零した。

「俺は、会えないんだ……」

 ゆっくりと敦賀さんは私の手を自分の腕から外し、部屋のなかへ戻ると扉を閉めた。

 目の前で閉ざされた扉が、閉ざされた敦賀さんの心そのもののようで、私の頬を知らずに涙がつたって落ちた。

「………」

 泣くことのできない目の前の心の代わりに、私は泣いた。

 次から次へと涙は溢れ、呼吸が上手にできなくなる。

 奥様の心に深い悲しみがあることは知っていた。おじ様も、クオンさんも、悲しみを抱えていることを知っていた。それなのに、どうして……私はどうして、敦賀さんの心を思うことがなかったのだろう?

 このお屋敷に悲しみが満ちているというのに、どうして、敦賀さんの心の奥にある深い悲しみの泉に気付くことができなかったのだろう?



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