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zoom RSS 新☆LME学園 049

<<   作成日時 : 2012/10/17 11:02   >>

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新章☆



 冷たい空気は満天の星空をより一層美しく見せる。その日は子供も大人もあやかしの世界の者の姿をし、夜空の下のパーティを楽しんでいた。

「トリック オア トリート!」

 そんなはしゃいだ声が、そこかしこで響いていた。笑い声の溢れる人の群れから離れ、私は施設を囲む林のなかへと入り込んだ。

「トリック オア トリート」そんなお決まりの台詞を言って、大人からお菓子をもらいたいとは思わなかった。私はただ、上手にできたかぼちゃのパイをお母さんとお父さんに届けたかった。だから、施設を飛び出して、特別なその夜に“幽霊”を探した。お母さんにもお父さんにも会ったことはなかったけれど、きっと会えば、ちゃんとわかると思った。

 けれど、一時間も林のなかを歩いても、“幽霊”には会えなかった。足は疲れて歩く速度は落ち、ますます冷たくなった空気に体温が奪われて身体がすこし震えた。とうとう歩みが止まり、私はその場にしゃがみ込んだ。空を見上げると、そこには変わらずに美しい星たちがきらめいていて、私はその美しさにか、寂しさにか、泣きそうになった。

「トリック オア トリート」

 そんなお決まりの台詞を言われたのは、最初の一滴が瞳から零れそうな時だった。慌てて振り返ると、私の後ろには漆黒のマントを目深に被った少年が立っていた。

「トリック オア トリート。お菓子をくれなきゃ、イタズラしちゃうよ」

 驚いてなにも言えずにいた私に彼はもう一度そう言うと、すこしずつ近づいてきた。マントに隠れて顔がよく見えない少年のことがなんだか怖くて、私はお母さんとお父さんにあげようと思っていたかぼちゃのパイが入ったカゴを彼に差し出した。カゴからかぼちゃのパイを取り出した少年はパイを一口食べて、それから口元を緩めた。

「すごく美味しいね」

 そう言うと、彼はマントを頭から外した。星の灯りの下、現れた少年の姿に私はますます驚いた。彼の髪は星の光そのもののように美しく輝き、白い肌も青い瞳も、優しい微笑みも、まるで絵本に描かれた王子様そのものだった。

「……王子様?」

 私の言葉に、彼はすこし驚いたようにその瞳を見開き、それからクスクスと笑った。

「残念。僕は王子なんかじゃないんだ」

「どうして?」

「どうして……か、そうだね。僕よりも王子に相応しい人間がいるからだよ」

「あなたも、王子様みたいなのに?」

「うん。僕じゃ駄目なんだよ」

「……わからない」

「君には、僕が王子に見えるの?」

「うん!」

「そう……じゃぁ、今日は特別に君の王子様になってあげる」

 そう言って笑った彼は私の身体を抱き上げると、「お城までお送りしましょう。お姫様」と言って歩き出した。

 私は彼の美しい髪がすぐ近くで揺れるのが嬉しくて、きゃっきゃ、きゃっきゃとはしゃいだ。

 私が一時間かけて歩いた道のりを彼は三十分ほどで歩き、私を無事に施設へと送り届けてくれた。

 私がいなくなっていたことなど誰も気付いていなかったようで、その場は変わらずに華やかだった。そんななかに私を降ろした彼は、「じゃあね」と私の頭をくしゃりと撫でた。



 懐かしい夢から覚めた私は頬に涙が伝っていることに気付いて、それを手の甲で拭った。

 あの日、はじめて会った少年だったのに、私は彼との別れが寂しくて、心細くて泣いた。そんな私に彼は、「星のかけらだよ」と美しい石をくれた。

「また会える?」そう聞くと、彼は首を横に振った。

「僕も君の王子様でいたいから、もう会えないんだ」

 最後の彼の言葉の意味がわからないまま、あの日から私は彼とは一度も会えていない。





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