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<<   作成日時 : 2012/02/08 14:58   >>

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 セバスチャンさんの案内で、私はお城のさらに奥にある部屋の扉の前へと来ていた。

「ジュリエナ様はこちらのお部屋におられます。ご自分からこの部屋を出ることはありません」

 私は大きく、重厚な扉を仰ぎ見た。

「これまでは私が奥様のお世話をさせていただいていたので、なにかありましたらいつでもお声掛けください」

「はい……なにか、特別な注意点などは?」

「特にありません」

「ないんですか?」

「奥様は……もう何年もご自分の意志を表してはおりませんから」

「……そうですか…」

「それではよろしくお願いします」と、セバスチャンさんは広い廊下を歩いて行った。

 私は再び部屋の扉へと視線を戻し、こくりと一度、息を呑んだ。そして、覚悟を決めて扉をノックする。


「失礼します」

 扉をすこし開いたけれど、なかから人の声は聞こえない。それどころか、人がいる気配さえもない。



 扉の隙間からなかへと入り、その部屋のなかが上質なレースのカーテンで幾重にも覆われているのを見た。

 カーテンの先にはきっと大窓があるのだろう。部屋の奥を隠すように幾重にもカーテンが高い天井からかけられている。しかし、部屋のなかは決して暗くない。日の光がレースを透かして、白いレースはさらに光を反射して、部屋のなかはまるで光に包まれているかのように明るい。

 そして、大窓から入る風がレースのカーテンを揺らし、きらめく純白は幻想的な世界を作り上げていた。


「……」

 一瞬、まるで天国にでも迷い込んでしまったかのような錯覚を覚えた私は、はたと自分を取り戻してカーテンの隙間を縫って奥へと進んだ。

 美しい庭に面した大窓の傍の白い革張りの椅子に、美しい一人の女性が座っているのが見えた。

「……奥様」

 彼女こそが、おじ様の奥様であるジュリエナさんだと確信を持った私はそう声をかけたが、彼女はまったく反応を示さず、ただただ庭へと視線を向けていた。

 私は奥様に近寄り、その美しいお顔を覗くようにして再び「奥様」と声をかけようとした。

「……」

 しかし、実際には私の声は言葉にも、無意味な音にさえもならなかった。奥様の病的なまでに白い肌と無機質な目を見た私は、発すべき自分の声を失った。


「……」

 数分間の間、私はただ奥様の姿を見つめていた。おじ様は、ただ優しく接してくれればそれでいいと言った。けれど、優しさとはなんだろうか?

 優しさも、冷たさも、相手によって変わるものじゃないだろうか?

 相手の反応によって、バランスを取るものじゃないだろうか?

「……」

 私は、この目の前の美しい女性に、いったいなにをしてあげられるのだろう?

「……奥様」

 私は再び語りかける。

「私、最上キョーコといいます。今日から、奥様のお世話をさせていただきます。至らない点も多々あるとは思いますが、よろしくお願いします」

 視線が動くことはない。眼差しが温かくなることも、冷たくなることもない。微笑まれることも、怒られることも、ため息を吐かれることもない。


 それでも、私は、奥様が私の声を聞き、私の姿を見、そして、なにかを思っていると信じることにした。


 それが優しさかどうかはわからない。けれど、他に“優しさ”を思いつかなかった。

 もしかすると、私を嫌いかもしれない。気に入らないかもしれない。それでも、構わない。

「奥様、お茶を淹れてまいりますね」

 私は奥様に深く頭を下げて、厨房へと向かった。





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